A氏は狭くるしい0次元の世界からなんとか抜け出そうと試みた。前だか、横だか、はたまた上だか分からなかったが、ジャンプを試みた。何度目かのジャンプで0次元の世界から抜け出したよう気がした。なぜなら動けるのだ。だが不便なことに何も見えない。真っ暗な世界だ。まあ、動けるだけでもいい。運動不足にならないですむ。動くのは始めての経験だ。まわりが真っ暗で何も見えないから何かにぶつかるおそれがあるので、慎重に動かなければならない。前後、左右、斜めに少し動いてみた。上にも少し飛び上がってみた。確かに動ける。この真っ暗な世界を探ってみたくなった。探るにしても何も見えないから、視覚以外の感覚にたよるしかない。しばらく動き回った限りでは地面以外は何もないようだ。地面は平らのようだ。地面を触ってみたが、何でできているのかわからない。とにかく真っ暗なのだ。疲れてきたのと特に目新しい発見もないので第一次探検はほどほどにして休むことにした。
しばらくすると、少し暖かくなってきた。さらに時間がたつとさらに暖かくなってきた。暖かいというよりは少し暑いくらいだ。幸い耐えられないほどではない。暑さは回り全体からまんべんなく、じわじわと伝わってきているようだ。風はないが湿っぽくもないので助かる。さらにしばらくすると暑さは安定してきた。少し暑いが第二次探検をこころみることにした。地面は平らで障害物もなさそうなので、すこし速度をあげて探検範囲を広げることにした。しばらく進んで行くと地面がせり上がっていくのが感じられた。さらに進むとせり上りは急になり、それより先へ行くのが困難になった。前に進むというよりは上に登る感じだ。A氏は極めて身が軽いがこの暗黒世界には重力があるようだ。これ以上に登るはあきらめた。反対方向にも進んで行ってみたが、おなじような結果だった。左右方向にも進んで行ってみたが、やはり同じような結果だった。斜め方向にもいくどか方向を変えて進んで行ってみたが、やはり同じような結果だった。上の方は確認できないがこの暗黒世界は平面的には限界があるようだ。もし上部もすべて限界があるとすると、この暗黒世界は空間的に限られた世界ということになる。何かの中にいるのだ、いいかえれば閉じ込められているのだ。暑さもあるが、少し息ぐるしくなくもない。再び少し休むことにした。
しばらく休んでいると、少し涼しくなってきた。 さらに時間がたつとさらに涼しくなってきた。涼しいというよりは少し寒いくらいだ。熱が少しづつ外へ逃げ出して行っているようだ。
こうして一日らしきものが終わった。
sptt
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