Saturday, November 3, 2012

北の果て -A氏北の極に立つ


A氏が北の方向に歩き始めてからかなりの年月が過ぎた。あきらめずに歩き続けたかいがあって、まもなく北の果てにたどり着く。むちゃくちゃ寒いが、もう少しだ。前方に白い旗が見えてきた。あたり一面白いので見分けにくいが、白い布切れのようなものが竿の先ではためいているので旗だろう。あそこがきっと北の果て-北極に違いない。一番乗りにはなれないが、目印があるのはありがたい。さらに寒さを衝いて歩いた。着いた。とうとう着いた。北の果てだ。旗には黒色でNPの文字が書かれていた。North Pole の意味だろう。北の果てということは、もうこれ以上前に進んでも北に向かうことにはならない。前方は東でも西でもなさそうだから南ということになる。変な気分だ。どの方向へ歩いても南に向かうことのなる。まわりが全部南向きなのだ。北の果てを過ぎると南へ向かうことになる。北極とはわけのわからない場所だ。しばらく休んでからA氏はさてどの南の方へ行こうか悩み始めた。

sptt 

Friday, September 21, 2012

謎の黒い物体 -A氏暗黒の世界を探検すろこと

A氏は狭くるしい0次元の世界からなんとか抜け出そうと試みた。前だか、横だか、はたまた上だか分からなかったが、ジャンプを試みた。何度目かのジャンプで0次元の世界から抜け出したよう気がした。なぜなら動けるのだ。だが不便なことに何も見えない。真っ暗な世界だ。まあ、動けるだけでもいい。運動不足にならないですむ。動くのは始めての経験だ。まわりが真っ暗で何も見えないから何かにぶつかるおそれがあるので、慎重に動かなければならない。前後、左右、斜めに少し動いてみた。上にも少し飛び上がってみた。確かに動ける。この真っ暗な世界を探ってみたくなった。探るにしても何も見えないから、視覚以外の感覚にたよるしかない。しばらく動き回った限りでは地面以外は何もないようだ。地面は平らのようだ。地面を触ってみたが、何でできているのかわからない。とにかく真っ暗なのだ。疲れてきたのと特に目新しい発見もないので第一次探検はほどほどにして休むことにした。

しばらくすると、少し暖かくなってきた。さらに時間がたつとさらに暖かくなってきた。暖かいというよりは少し暑いくらいだ。幸い耐えられないほどではない。暑さは回り全体からまんべんなく、じわじわと伝わってきているようだ。風はないが湿っぽくもないので助かる。さらにしばらくすると暑さは安定してきた。少し暑いが第二次探検をこころみることにした。地面は平らで障害物もなさそうなので、すこし速度をあげて探検範囲を広げることにした。しばらく進んで行くと地面がせり上がっていくのが感じられた。さらに進むとせり上りは急になり、それより先へ行くのが困難になった。前に進むというよりは上に登る感じだ。A氏は極めて身が軽いがこの暗黒世界には重力があるようだ。これ以上に登るはあきらめた。反対方向にも進んで行ってみたが、おなじような結果だった。左右方向にも進んで行ってみたが、やはり同じような結果だった。斜め方向にもいくどか方向を変えて進んで行ってみたが、やはり同じような結果だった。上の方は確認できないがこの暗黒世界は平面的には限界があるようだ。もし上部もすべて限界があるとすると、この暗黒世界は空間的に限られた世界ということになる。何かの中にいるのだ、いいかえれば閉じ込められているのだ。暑さもあるが、少し息ぐるしくなくもない。再び少し休むことにした。

しばらく休んでいると、少し涼しくなってきた。 さらに時間がたつとさらに涼しくなってきた。涼しいというよりは少し寒いくらいだ。熱が少しづつ外へ逃げ出して行っているようだ。

こうして一日らしきものが終わった。

sptt

Sunday, January 22, 2012

0次元の世界 - A氏0次元に住んで通り過ぎるQたちを観察すること

A氏は0次元、つまり点の世界に住んでいる。一番こまるのは縦にも横にも上下にも身動きが取れないことだ。楽しみといえば、時計はないが、時間が過ぎ去るのが感じられることだ。あるときA氏は何かが自分の中を通り過ぎるのを感じたた。縦も横も上下も無い点の世界の世界だから何かがA氏の前や後や上を通り過ぎていくことは物理的に不可能なのだ。A氏は再三何かが自分の中を通り過ぎるのを感じたので、何かが通り抜けるのは間違いないが、どうも物質では無いようだと結論した。なんだかよくわからないモノなので Query のQと名付けた。

あるとき、Qが次々と自分の中を通り過ぎるのを感じた。どうも行ったり来たりしているようでもある。よく区別がつかないがQは一人ではなく、仲間がいるようだ。はじめのうちはよくわからなかったが、Qが通り抜けるのを感じることができるのはかすかに何か温かいモノが自分の中を通り抜けるを感じるためと判断した。微妙な差だが、少しばかり温(ぬく)いのはQたちがたくさん通り抜けて行くため、ほんのわずかに温かくなるのはわずかばかりのQたちが通り抜けて行くためだとも考えた。幸い我慢できないほどの熱さにはならない。Qたちは何か温かいモノを運んでいるのだろうか?ご苦労なことだ。よく疲れないものだ。腹がへるから、何かエネルギーのあるものを食わないとじきに死んでしまうのではないかと心配した。

あるとき、ためしにQが通り抜けようとするとき声をかけめた。
”Qさん、あんたどこから来てどこへ行くのかね?”
予期に反して、すぐに返事がきた。
”私もよくわからないんだ。何かに引かれている動いているようだし、何かに押されて動いているようでもある。”
もっといろいろ尋ねたかったが、すでにQは通り抜けて行ってしまったようなのであきらめた。しばらくして反対方向からさっきのQと同じかどうかわからないが、Qが通り抜けようとしたので尋ねてみた。
”Qさん、あんた何か温かいモノを運んでいないかね?”
Qは答えた。
”いや、何も運んじゃいないよ。ただ行ったり来たりしているだけだ。いわば、運動だよ。じゃー、バイバイ。今忙しいんだ。”
もっといろいろ尋ねたかったが、忙しそうなのであきらめた。
まもなくして、さっきとは反対の方向からまたさっきのQと同じとおぼしきQが通り抜けようとしたので尋ねてみた。
”Qさん、行ったり来たりしているのはわかったけど、速いかったりゆっくりしたりするのかい?
Qは忙しいせいかめんどうくさそう答えた。
”つよく引っぱられたり押されたりすれば速く動くし、よわく引っぱられたり押されたりすればゆっくり動く道理だ。私にはどうしようもない。いま速く動かされているから体がほてっているよ。じゃー、バイバイ。”
A氏はQが通り抜けるときに温かく感じるわけが少しわかったような気がした。



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