A氏が北の方向に歩き始めてからかなりの年月が過ぎた。あきらめずに歩き続けたかいがあって、まもなく北の果てにたどり着く。むちゃくちゃ寒いが、もう少しだ。前方に白い旗が見えてきた。あたり一面白いので見分けにくいが、白い布切れのようなものが竿の先ではためいているので旗だろう。あそこがきっと北の果て-北極に違いない。一番乗りにはなれないが、目印があるのはありがたい。さらに寒さを衝いて歩いた。着いた。とうとう着いた。北の果てだ。旗には黒色でNPの文字が書かれていた。North Pole の意味だろう。北の果てということは、もうこれ以上前に進んでも北に向かうことにはならない。前方は東でも西でもなさそうだから南ということになる。変な気分だ。どの方向へ歩いても南に向かうことのなる。まわりが全部南向きなのだ。北の果てを過ぎると南へ向かうことになる。北極とはわけのわからない場所だ。しばらく休んでからA氏はさてどの南の方へ行こうか悩み始めた。
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